「気が騒いでならんが。」
と雑所は、しっかと腕組をして、椅子の凭りに、背中を摺着けるばかり、びたりと構えて、
「よく、宮浜に聞いた処が、本人にも何だか分らん、姉さんというのが見知らぬ女で、何も自分の姉という意味では無いとよ。
はじめて逢ったのかと、尋ねる、とそうではない。この七日ばかり前だそうだ。
授業が済んで帰るとなる、大勢列を造って、それな、門まで出る。足並を正さして、私が一二と送り出す……
すると、この頃塗直した、あの蒼い門の柱の裏に、袖口を口へ当てて、小児の事で形は知らん。頭髪の房々とあるのが、美しい水晶のような目を、こう、俯目ながら清しゅう※って、列を一人一人見遁すまいとするようだっけ。
物見の松はここからも見える……雲のようなはそればかりで、よくよく晴れた暖い日だったと云う……この十四五日、お天気続きだ。