スケートが、何うしたんだ。
我聞く。――魏の正始の時、中山の周南は、襄邑の長たりき。一日戸を出づるに、門の石垣の隙間から、大鼠がちよろりと出て、周南に向つて立つた。此奴が角巾、帛衣して居たと言ふ。一寸、靴の先へ團栗の實が落ちたやうな形らしい。但しその風※は地仙の格、豫言者の概があつた。小狡しき目で、じろりと視て、
「お、お、周南よ、汝、某の月の某の日を以て當に死ぬべきぞ。」
と言つた。
したゝかな妖である。
處が中山の大人物は、天井がガタリと言つても、わツと飛出すやうな、やにツこいのとは、口惜しいが鍛錬が違ふ。
「あゝ、然やうか。」
と言つて、知らん顏をして澄まして居た。……言は些となまぬるいやうだけれど、そこが悠揚として迫らざる處である。
鼠還穴。
その某月の半ばに、今度は、鼠が周南の室へ顯はれた。もの/\しく一揖して、
「お、お、周南よ。汝、月の幾日にして當に死ぬべきぞ。」
と言つた。