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ただ今でも可笑しいのは
すると浜べにはいつのまにか、土人が大勢集っている。その上に高い帆柱のあるのが、云うまでもない迎いの船じゃ。おれもその船を見た時には、さすがに心が躍るような気がした。少将や康頼はおれより先に、もう船の側へ駈けつけていたが、この喜びようも一通りではない。現にあの琉球人なぞは、二人とも毒蛇に噛まれた揚句、気が狂ったのかと思うたくらいじゃ。その内に六波羅から使に立った、丹左衛門尉基安は、少将に赦免の教書を渡した。が、少将の読むのを聞けば、おれの名前がはいっていない。おれだけは赦免にならぬのじゃ。――そう思ったおれの心の中には、わずか一弾指の間じゃが、いろいろの事が浮んで来た。姫や若の顔、女房の罵る声、京極の屋形の庭の景色、天竺の早利即利兄弟、震旦の一行阿闍梨、本朝の実方の朝臣、――とても一々数えてはいられぬ。ただ今でも可笑しいのは、その中にふと車を引いた、赤牛の尻が見えた事じゃ。
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