戦機は熟した。 全身に、妙な白い入墨をした原地人兵が、手に手に、盾をひきよせ、槍を高くあげ、十重二十重の包囲陣をつくって、海岸に押しよせる狂瀾怒濤のように、醤の陣営目懸けて攻めよせた。 これに対して、醤の陣営は、闃として、鎮まりかえっていた。 ただ、かの醤の陣営の目印のような高き望楼には、翩飜と大旆が飜っていた。 その旆の下に、見晴らしのいい桟敷があって、醤主席は、幕僚を後にしたがえ、口をへの字に結んでいた。 この望楼の前には、百万を数える人造人間が、林のように立って居り、その望楼の後には、これは赤い血の通った醤軍百万の兵士たちが、まるでワールド・シリーズの野球観覧をするときの見物人のような有様で、詰めかけていた。 雲霞のような原地人軍は、ついに前方五千メートルの向うの丘のうえに姿を現した。「おい、油学士。もう人造人間をくりだしてもいいじゃろう」「はい。只今、命令を出します」 命令は出た。