八橋は赫となった。病気で外へも出られないという者が、この寒い風に吹かれて仲見世あたりをうろついている筈がない。病気は嘘に相違ない。そんな嘘をついてまでも、ここへ足踏みをしないからは、もうわたしを見限ったものに相違ない。わたしは捨てられたに相違ない、欺されたに相違ないと、廓育ちの彼女は何でも一途に「相違ない」ことに決めてしまって、身もだえしてくやしがった。こうした機会を待ち設けていたように持病の癪の虫が頭をもたげた。さなきだに狂いかかっている彼女は、突然におそって来た差込みの苦痛に狂って倒れた。それは浮橋がここを出ると間もない出来事であった。 そんな騒ぎで、八橋は仲の町へも立花屋へも、とても出て行かれる訳ではなかった。「立花屋のお客は誰でおぜえすえ」と、掛橋はまた訊いた。それは佐野の大尽であることを浮橋は話した。そうして、次郎左衛門も雷門まえで栄之丞に逢ったという話を自分もいま聴いて、不思議に思っていたところだと言った。栄之丞が病人でないことはいよいよ確かめられた。 栄之丞がなぜそんな嘘をつくのか、二人にも判らなかった。なんにしても花魁の怒るのは無理もないと思った。くやしがって癪をおこすはずだと思った。しかし、そんなことを評議している場合でない。次郎左衛門は茶屋に待っている。いつまでも沙汰なしにしておいて、機嫌を損じては悪いと思ったので、浮橋と掛橋は取りあえず仲の町へ行った。出がけに掛橋は禿を叱った。
霊視 除霊 準強制わいせつ>容疑で僧侶逮捕 「除霊」とわいせつ行為 - Gooブログ