「さあ、おまえからお願い申せよ。」 娘は恥かしそうに笑いながら進み出た。「今も申す通り、偽物などを売るような私らではございません。そんなことをしましたら、福島のお代官所で縛られます。安心してお求めください。」 梅次郎も義助も若い者である。眼のまえに突然にあらわれて来た色白の若い女に対しては、今までのような暴っぽい態度を執るわけにもいかなくなった。「姐さんがそう言うのだから偽物でもあるまいが、熊の胆はもう前の宿で買わされたのでな。」と、義助は言った。 これはどの客からも聞かされる紋切型の嘘である。この道中で商売をしている以上、それで素直に引下がる筈のないのは判り切っていた。娘は押返して、買ってくれと言った。梅次郎と義助は買うような、買わないような、取留めのないことを言って、娘にからかっていた。梅次郎は、ことし廿一で、本来はおとなしい、きまじめな男であったが、長い道中のあいだに宿屋の女中や茶屋の女に親しみが出来て、この頃では若い女に冗談の一つも言ってからかうようになったのである。義助は二つ違いの廿三であった。
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