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我が胸のあたりを
 我が胸のあたりをさしのぞくがごとくにして、
「こんな扮装だから困ったろうじゃありませんか。
 叔母には受取ったということに繕って、密と貴女から四ツ谷の方へ届けておいて下さいッて、頼んだもんだから、少い夜会結のその先生は、不心服なようだッけ、それでは、腕車で直ぐ、お宅の方へ、と謂って帰っちまったんですよ。
 あとは大飲。
 何しろ土手下で目が覚めたという始末なんですから。
 それからね。
 何でも来た方へさえ引返せば芳原へ入るだけの憂慮は無いと思って、とぼとぼ遣って来ると向い風で。
 右手に大溝があって、雪を被いで小家が並んで、そして三階造の大建物の裏と見えて、ぼんやり明のついてるのが見えてね、刎橋が幾つも幾つも、まるで卯の花縅の鎧の袖を、こう、」
 借着の半纏の袂を引いて。
「裏返したように溝を前にして家の屋根より高く引上げてあったんだ。」
 それも物珍しいから、むやむやの胸の中にも、傍見がてら、二ツ三ツ四ツ五足に一ツくらいを数えながら、靴も沈むばかり積った路を、一足々々踏分けて、欽之助が田町の方へ向って来ると、鉄漿溝が折曲って、切れようという処に、一ツだけ、その溝の色を白く裁切って刎橋の架ったままのがあった。
  川崎 審美歯科 虎穴に入らずんば虎子を得ず
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