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私の名を聞いて
  私の名を聞いて奧から出て來た背の高い友の白髮は、この前逢つた時より一層ひどいものに眼についた。その細君には初對面であつた。頻りに固辭したが、終(つひ)に下駄をぬがせられ、やがて一晩厄介になる事になつてしまつた。そして夕飯の仕度の出來るまで、近くを散歩した。公園の何山とかいふに登れば眺望がいゝとの事であつたが、勞れてゐて出來なかつた。錢湯に行くすら億劫(おくくふ)であつた。勞れるわけはないのだが、久し振に家を出た氣づかれとでもいふであらう。或は失敗勞れであつたかも知れぬ。 氣賀町は寂びて靜かな町に見えた。昔、何街道とかの要所に當り、關所の趾をそのまゝにとつてある家などあつた。町はづれを淺く清らかな伊井谷川が流れてゐた。橋に立つて見ると、鮎や鮠(はや)の群れて遊んでゐるのがよく見えた。泳いでゐる魚の姿を久し振に見た。 この友はこの附近で小學校の校長を長い間やつてゐた。それをこの四月にやめて、今は土地に新設された實科女學校に出てゐるとの事であつた。廣くもない庭に、植ゑも植ゑたり、蟻の這ふ隙間もないまでに色々なものが植ゑてあつた。いま花の眼についたは、罌粟(けし)、菖蒲、孔雀草、百日草、鳳仙花、其他、梅から柿梨茱萸(ぐみ)のたぐひまで植ゑ込んである。その間にはまた、ちしや、きやべつ、こんにやくだま、などの野菜ものも雜居してゐるのである。それでゐて何處か落ちついてゐる。妙に調和した寂びが感じられた。被リンク今からでもきっと間に合う
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