春彦 桂どの。職人風情とさも卑しい者のように言われたが、職人あまたあるなかにも、面作師といえば、世に恥かしからぬ職であろうぞ。あらためて申すに及ばねど、わが日本開闢以来、はじめて舞楽のおもてを刻まれたは、もったいなくも聖徳太子、つづいて藤原淡海公、弘法大師、倉部の春日、この人々より伝えて今に至る、由緒正しき職人とは知られぬか。かつら それは職が尊いのでない。聖徳太子や淡海公という、その人々が尊いのじゃ。かの人々も生業に、面作りはなされまいが……。春彦 生業にしては卑しいか。さりとは異なことを聞くものじゃの。この春彦が明日にもあれ、稀代の面をつくり出して、天下一の名を取っても、お身は職人風情と侮るか。かつら 言んでもないこと、天下一でも職人は職人じゃ、殿上人や弓取りとは一つになるまい。春彦 殿上人や弓取りがそれほどに尊いか。職人がそれほどに卑しいか。かつら はて、くどい。知れたことじゃに……。(桂は顔をそむけて取り合わず。春彦、むっとして詰めよるを、楓はあわてて押し隔てる。)
税理士 神戸 雉も鳴かずば撃たれまい