与兵衛 いつの間にか本身に変っていた……。
おさき まあ、どうしたんでしょう。
与兵衛 それがどうも判らないな。
五助 まったく判りませんよ。
与兵衛 判りませんで済むものか。なんにしてもお前さんが係り合いだから、そう思ってください。
五助 でも、旦那……。
与兵衛 ええ、いけない、いけない。どうしてもおまえさんが係り合いだ。
おさき (与兵衛に。)まあ、おまえさん。そんなことを云っているよりも、早く角太郎の手当てをしてやったらどうです。なんだか息づかいがだんだんにおかしくなるじゃありませんか。
与兵衛 (気がついて。)むむ、うかうかしてはいられない。これ、医者を呼びにやったか。
庄八 はい。さっきから二度も呼びにやりました。
おさき 呼びにやったらすぐに来てくれそうなものだがねえ。手間が取れるようならほかのお医者を呼んでおいでよ。ぐずぐずしていると、間にあわないじゃあないか。
与兵衛 誰でもかまわないから、すぐに来てくれる医者を呼んで来い。三人でも五人でも十人でも一度に呼んで来い。早くしろ。早くしろ。なにをぼんやりしているのだ。
店の者 はい、はい。行ってまいります。