沖島速夫は、このふしぎな監房の中に、押しこめられたのであった。 なかは、いたって、せまい、やっと、二メートル平方ぐらいであった。 空気ぬき兼明りとりの天窓が、天井に空いていた。 この監房は、ふしぎに寒くない。氷の中にとじこめられているのだから、冷蔵庫の中に入っているようなもので、さぞ寒かろうと思ったのに、かえって温い感じがしたのである。 沖島は、缶詰をいれてきたらしい箱のうえに、腰をおろした。彼はべつに悲しんでいる様子もなかった。「さあ、ここですこしねむるかな」 彼は、腰をかけたままいねむりをはじめた。どこまで大胆な男であろう。 しばらくねむった。そのうちに、彼をよぶものがあった。「おい、黄いろい幽霊!」 はて――と、眼をさますと、窓のところに二つの顔が、沖島の方をのぞいていた。 一つは、衛兵の顔、もう一つの顔は、ピート一等兵の大きな顔であった。「おい、コーヒーをもってきてやったよ」 ピートがいった。
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