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犬は強く空気を口で吸ふことで
 犬は強く空気を口で吸ふことで、一頁一頁開くことをやつてゐるのだ、――と博士は観察を下した、プーリは第三面の政治欄は、殊に熱中的に熟読してゐた、何かの仕事を読んで感動したときだらう、片足をもちあげて頭をぼりぼりと引掻いた、すると頭から脱気が新聞の上にばらばらと落ちるのであつた。 犬は大部分をこの政治欄を読むことに費やした、三面記事のトップを、軽蔑的に、ちらりとみるかと思ふと、下段の黒枠つきの死亡広告を読むときは、犬は一層フフン、フフンと軽蔑的に鼻を鳴らすのであつた、ラジオ欄、娯楽欄は黙殺、家庭欄は興味があるらしく、料理に関する記事は熱心に貪るやうに読んで、こゝでは感極まるといつた声でクンクンと鼻を鳴らすのであつた、博士が後に調べて判つたのであつたが、その日の新聞の料理献立表を彼は愛読してゐたらしく、そこには『豚肉シチュー煮、白菜ごま酢』の取合せ献立と『牛肉ソーテ』の料理法がのつてゐた、『肉を五切に切りわけ、塩、胡椒をふり、フライパンにバタをとかし、強火でその肉を焼く』云々と書かれてゐたから、プーリはそこのところを読んで、鼻を咽喉とをたまらなくなつてクンクン鳴らしたものと思はれる。新聞面のうちで全然顧みない欄があつた、それは四面の就職欄であつた。さとみんマカロン blog :: 隨意窩 Xuite日誌
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