するとこの時妙なことが起った。その妙齢な美人は、いとも御気嫌斜めな御面体で、「失礼しちゃうワ。そんなもの、あたしンじゃアなくってよ?」 いい捨てて向きなおると、すたすたと出口のほうへ歩み去り、ぷい、と見えなくなってしまった。 一方改札口では、これ又一騒動持上っていた。何思ったか例の案内人は、宇利氏の背後から押しのけるようにして柵を飛び越そうとしたが、宇利氏に引きとめられて、しばらくゴテゴテと押し合い揉み合い、やがて馳けつけたほかの駅員達に取押えられて、どうやら観念したらしく、事務室のほうへ連れて行った。宇利氏は再び向きなおって、さっさと仕事をつづける。静かなものだ。 その晩、非番になった宇利氏は、赤帽溜へやって来て、ボンヤリしている伝さんへ、笑いながら切りだした。