そのときKはやっと、アマーリアがまた部屋にもどっているのに気づいた。しかし、彼女は遠く離れて両親のテーブルのところにいて、リューマチのため両腕を動かすことのできない母親にものを食べさせながら、父親に向っては、もう少し食事をしんぼうして下さい、すぐお父さんのところへいって食べさせてあげますから、というのだった。しかし、彼女がたしなめても効果はなかった。というのは、父は自分のスープにありつこうとひどくがつがつして、自分の身体の弱さに打ち勝ち、あるいはスープをスプーンですすろうとしたり、あるいは皿から直接飲もうとしたりして、どちらもうまくいかないので不機嫌そうにうなっていた。スプーンは口のところへくるずっと前から空になり、口までとどくためしがない。ただいつでもたれ下がっている髯がスープにひたって、スープのしずくが四方へたれたり、飛び散ったりして、口のなかへだけはどうしても入らない。「三年の年月がお父さんをあんなにしてしまったんですか」と、Kはたずねた。しかし、彼はなお老夫婦とそこの片隅の家族のテーブルにくりひろげられている情景とに対して少しも同情はもたず、ただ嫌悪だけをおぼえるのだった。「三年の年月なんです」と、オルガはゆっくりいった。「あるいは、もっと正確にいうと、あのときのお祭りの二、三時間なんです。お祭りは村はずれの牧場の小川のほとりでやられました。わたしたちがついたときには、もう大変な人ごみでした。近くの村からもたくさんの人がやってきました。さわぎでみんな頭がぼーっとなっていました。
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