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給仕に呼ばれて
 給仕に呼ばれて、豹一は編輯長室へはいって行った。「君、いま手が空いているか?」 用事を吩咐る時の編輯長の文句はいつもこれだ。つまりは、人を使うのが巧いというわけだった。ところがこの言葉は豹一にははなはだ面白くなかった。手の空いていない時など、入社以後絶対になかったのである。「はあ、べつに……」豹一は赧くなった。「そんなら、ひとつやって貰おうか?」編輯長は豹一の成すべき仕事を説明して、「こら大任やよって、気張ってやってや」と、念を押した。 この際なら、どんなけちな仕事にでも豹一は活気づくことが出来たにちがいなかった。だから、大任だという編輯長の言葉は豹一をすっかりのぼせあがらせてしまった。「いま直ぐ廻ります」豹一は「廻ります」という如何にも新聞記者らしい言葉を使えたことに満足しながら、言った。「いま直ぐ言うても、カフェは晩にならんと店をあけへんぜ」 編輯長に言われて、豹一はまるで出鼻をくじかれた想いで、周章てて、「はあ、そんなら晩に……」と、言った。これもわれながら芸もない科白だった。一層まごついてしまった豹一は重ねて変なことを言った。「原稿は僕が書くんですか?」 むろんそんなわかり切った質問をする気は毛頭なかったのである。むしろ、良い原稿を書くぞという意気込みを含ませて、わざとそう言ったまでのことであった。ところが、編輯長にはそれがまるで「なるべくなら、ほかの人に書いてもらいたい。僕には未だ良い記事を書く自信がありませんから……」といっているようにきこえた。編輯長はがっかりしてしまったが、とにかく、「金が要るやろ」と、伝票を書いてくれた。 布団セット 激安 星野源 布団 歌詞
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