Kはうなずいたが、最近のさまざまなごたごたのためすっかりエルナのことを忘れ、彼女の誕生日のことも忘れていたので、チョコレートの話は明らかにただ、自分のことを叔父と叔母とに対してよく思わせてくれようとする心づかいから考えだしたものだった。それは非常にいじらしく、これからはきちんきちんと送ってやろうと思った芝居の切符ではきっと十分に償いきれないものだったけれども、寄宿舎を訪ね、ちっぽけな十八歳の女学生と話をするなどという気には今はなれなかった。
「で、どうだね?」と、叔父はきいたが、手紙ですっかり、急いでいたこと、興奮していたこと、を忘れてしまい、もう一度手紙を読んでいるらしかった。
「ええ、叔父さん」と、Kは言った。「ほんとうにそうなんです」
「ほんとうだって?」と、叔父は叫んだ。「ほんとうってどういうことなんだ? そんなことがほんとうだなんて、ありうることかい? どんな訴訟なんだ? でも刑事訴訟じゃあるまいな?」
「刑事訴訟なんです」と、Kは答えた。
「で、お前はここに落着きはらってすわっていながら、刑事訴訟を背負いこんでいるのか?」と、叔父は叫んだが、声がいよいよ大きくなっていった。
「落着いていればいるほど、結果はいいんです」と、Kは疲れたように言った。「心配しないでください」<a href="http://www.kotobuki-clovers-ns.com/">上野 保育園</a> <a href="http://mendori.angelfire.com/">http://mendori.angelfire.com/</a>