一災起これば二災起こる
■活躍したかという事実
正直のところを云うと私としてはあんまり公表したくない話である。既に今まで述べて来た話の中でも、私は取り返しの付かない大きな見落しをやっているので、冷静な頭で読まれた諸君は最早、とっくと気が付いておられる事と思う。そうしてこの狭山という男は、課長とか何とか偉そうな肩書を振りまわしているが、案外だらしのないそそっかし屋だ。おまけに下らないところで威張ったり、名探偵を気取ったりして、恐ろしく気障な奴だ……とか何とか腹を立てておられる人が在るに違いないと思う。
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■参考のために過ぎない
丁度扉に手をかけていた私は、そのまま振り返った。こんな温柔しい検事が一番苦手だと思いながら……。「何ですか」「貴方はどうしてもこの屍体を他殺とお認めになるのですか」 そう云う熱海氏の静かな音調には、ほかの生意気な検事連中にない透徹した真剣さがあった。私は私の自信を根柢から脅かされたような気がして思わず熱海氏の方に向き直った。「……無論です。犯人が居るから止むを得ません」「その婦人は果して犯人でしょうか」
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■白いハンカチ
それを広げて額からアゴにかけて汗をごしごしと拭く。 「ほら、新しい湾岸高速の出口の所、すっごいボーリング場できたじゃん」 「ああ、大きなボーリングのピンが屋根の上に載ってるやつ」 オサムはワイシャツのボタンをひとつはずし、首の周りにもハンカチを突っ込む。 「あのボーリング場にある喫茶店。あそこに『あいつ』が時々出入りしてるらしいんだ」
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