一災起これば二災起こる
■白いハンカチ
「どうして分かるんだよ」 立ち止まった僕が〈緑橋〉の鉄の欄干に手をかけると、ざらざらしたその感触の底から、焼けた鉄の感触が身体中に伝わってくる。遠くから貨物列車が何両も、次々に連結される音が聞こえる。汗まみれになったハンカチをポケットに突っ込みながら、オサムは大事なことを打ち明けるように声をひそめた。 「黒メガネの美術教師、いるだろ。あいつがあの店の常連なんだって。時々、変なやつらが何人か集まって、美術教師と相談みたいなことしてるらしいんだ。で、その中に『あいつ』も混じってるって言うんだ」 「誰が」 「見たやつがさ」 「だから誰が見たのさ」 「うるさいなあ。じゃ、お前は別の、何か確かなことで知ってることあるのかよ」 「別に」 不意に出てきた美術教師の噂にたじろぎながら、僕は動揺を見せまいと必死になっている。miq高田馬場店ホットペッパービューティー

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