この世でいちばん大事なこと
■ああ、なんという謙遜な言葉であろう
 ああ、なんという謙遜な言葉であろう。ああ、なんという部下思いの言葉であろう。 彼は、自分のたてた大功を誇らず、まず何よりも忠勇な部下であり、そしてまた一度は脱走兵の汚名を着た杉田のために、その功を称えたのであった。「いや、よく分かっとる」と、長谷部少佐は戦友の手をやさしく撫でつつ、「杉田も、えらい奴だ。貴様が優しくて強いから、そんないい部下ができたのだ。結局やっぱり貴様がえらいということになるのだ。さあ、飛行島は、ついに爆破された。これで英国の間違った永い間の悪夢も、きっと覚め、東洋における大日本帝国の正しい地位を考えなおすことになろう」

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■あ、日本刀の鞘みたいなものを
「あ、日本刀の鞘みたいなものを背負っているのが、左舷前方に見えます」 突然眼のさとい水兵が叫んだ。「日本刀を背に? どこだ」「指揮官、あれです」長谷部少佐は、水兵の指す海面を見た。扉か卓子かわからないが、とにかく大きな板片の上に、背中に黒鞘を背負ってうつぶしている半裸体の人間があった。「おお、あれだ。早く」 少佐の命令で、ボートはすーっとその方へよっていった。そして手練の水兵が棒と綱とでもって、巧みに半裸体の人間を艇内へ拾いあげた。「あ、日本人らしい。ひどく右腕をやられている」「おお川上だ。川上だ。川上、長谷部が救いに来たぞ」 長谷部少佐は、救われた人の骨ばった顔を見るや、われを忘れて駈けよった。軍医が、前に出てきて、心臓に耳をあてた。「どうだ、助けてやれないか」「ああ指揮官、心臓は微かながらまだ動いています。すぐ注射をしましょう。多分、大丈夫でしょう」

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■それは長谷部少佐が
 それは長谷部少佐が、昇進とともに艦長となった駆逐艦清風であった。艦橋に立つ少佐の前には、古谷司令官の鶴のような長身が見える。「おお、司令官。あれに飛行島が見えます。あ、なんという惨状!」 さすがの長谷部少佐も、あまりの無慚な飛行島の有様に眼を蔽いたいほどだった。「うむ、こいつにほんとうに向かって来られては、わが艦隊も相当苦戦に陥ったであろう。おお長谷部少佐、あれを見よ。飛行島はしずかに沈没してゆくぞ。今のうちに、例の川上等を捜索してはどうだ」「は。では直ちに出かけることにしましょう」 駆逐艦清風は、速力をゆるめて、静止へ――。モーター・ボートが、舷側からおろされた。長谷部少佐を指揮官として、決死の戦闘員十五名がのりこんだ。ボートは巧みに本艦をはなれ、舳を飛行島に向け、水煙をたてて驀進してゆく。 長谷部少佐は、船首に立って、友の姿はいずこぞと海面を流るる死体の一つ一つに注意をくばる。

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