■万一に考えられることは
「万一に考えられることは、特別の浮力です。物体が空気の中にあるために、自分が排除する容積だけの空気の重量に等しい浮力が、万有引力と反対方向に働いているのですが、こんなことは断るまでもない常識事です。そしてその浮力が仔猫の場合に於ても、鞄の場合に於ても万有引力に比して殆んど省略し得る程度の微小なる力です。これはこれで片づいたとして第二に考えられることは……」「頭の痛くならんように喋ることはできないものかね」「ご尤もです。……それでそれは――第二に考えられることは、万有引力常数を変えてしまうこと。第三には第三の物体を誘致し来って、それによる引力を、万有引力以上に効き目を持たせること。それから第四に、アインシュタインの設定した万有引力テンソルを……」「待った。もうたくさん」
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■怪談ということでは
「怪談ということでは、この事件の解決はちょっとむずかしいですよ。物理学で行くなら、仔猫も鞄も同じ格です。そしてそらに飛ぶ場合も考えられないことはない。課長さん、そのことについて赤見沢博士の助手の何とかいう婦人に糾してみましたか」「だめだ、あの小山すみれは。ああいう女は、一旦依怙地となったら、殺されても喋らないものだ。赤見沢はさすがにそれを心得て雇っている。沈黙女史は今のところそっとして置くしかない。しかし――帆村君。生もない鞄がなぜ飛び得ると考えるのか、怪談以外の考え方に於て……。ねえ君、林檎も落ちるよ、星も落ちる、猿も木から落ちる」「万有引力が正常普通に作用するかぎり、それはその通りです。猫の子が宙を飛び、鞄が空を走るためには、それらの物体に万有引力と反対の方向に作用する相当の力が働いていると断定して間違いないわけでしょう。課長さん、これに答えて下さい」「さあ、わしには分らんね、全く……」
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■冬日の暖くさしこんだ硝子窓の下
冬日の暖くさしこんだ硝子窓の下に、田鍋捜査課長の机があった。課長と相対しているのは、長髪のてっぺんから地肌がすこし覗いている中年の長身の紳士だった。無髭無髯の顔に、細い黒縁の眼鏡をかけ、脣が横に長いのを特徴の、有名なる私立探偵帆村荘六だった。一頃から思えば、この探偵も深刻にふけて見える。「猫の子が宙を飛べるものなら、鞄が宙を飛んだって、仔猫の場合以上にふしぎだとはいえないわけですね」「いや帆村君、それは違うだろう。猫の子が宙を飛ぶのは許さるべきとしても、生なき鞄が宙を飛ぶのは怪談だよ。その怪談に怯やかされてわが五百万の都民は枕を高うして睡れないと山積する投書だ。あれあの籠を見たまえ」と課長は、二つ三つ向こうの部下の机上を指す。それは尤もな風景を見せていた。
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