一災起これば二災起こる
■東京に立ち寄った時
母親がわりの葉子の愛を見失うまいとして取り着いて来る、庸三の末の娘の咲子と、幾年ぶりかで産みの母の手に帰って来た瑠美子と、そのいずれもの幼い心を傷つけまいとして、葉子は万遍なく愛撫の心と手を働かした。外へ出る時、大抵彼女は咲子の手を引いていたが、咲子はまた瑠美子と手を繋いで歩いた。夜寝るときも葉子は二人を両脇にかかえるか、眠るまで咲子だけを抱くようにして、童謡を謳ったり、童話を聞かせたりした。――と、そういうふうに庸三の目にも見え、心にも感じられたが、微妙な子供たちの神経を扱いわけるのは、彼女にも重すぎる仕事であった。 ある日も咲子は、学校から退けて来ると、彼女の帰るのを待っていた瑠美子と、縁側で翫具を並べて遊んでいた。細かい人形、お茶道具、お釜に鍋やバケツに洗濯板、それに色紙や南京玉、赤や黄や緑の麦稈のようなものが、こてこて取り出された。飛蚊症 ガイド 商品

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