■産婆が赤い背の丸々しい産児
産婆は慣れた手つきで、幼毛の軟かい赤子の体を洗ってしまうと、続いて汚れものの始末をした。部屋にはそういうものから来る一種の匂いが漂うて、涼しい風が疲れた産婦の顔に、心地よげに当った。笹村の胸にもさしあたり軽い歓喜の情が動いていた。「随分骨が折れましたね。」産婆はやっと坐って莨を吸った。「このぐらい長くなりますと、産婆も体がたまりませんよ。私もちょッと考えたけれど、でも頭さえ出ればもうこっちのものですからね。」「そんなだったですか。」と言うように笹村は産婆の顔を見ていた。 頭が出たきりで肩がつかえていた時、「それ、もう一つ……。」と産婆に声をかけられて、死力を出していた産婦の醜い努力が、思い出すとおかしいようであった。「もっと自然に出るということに行かないもんですかね。」「そんな人もありますよ。けど何しろこのぐらいの赤ちゃんが出るんですもの。」と産婆は笑った。笹村は当てつけられているような気がして、苦笑していた。飛蚊症 治し方
(c)一災起これば二災起こる All rights reserved.