一災起これば二災起こる
■お産は明家の方ですることにした
九時十時と不安な時が過ぎて行ったが、産婦は産婆に励まされて、いたずらにいきむばかりであった。体の疲れるのが目に見えるようであった。「ああ苦しい……。」 お銀は硬い母親の手に縋りついて、宙を見つめていた。「どういうもんだかね。」 十二時過ぎに母親は家の方へ来ると、首を傾げながら笹村に話しかけた。「難産の方かね。」 火鉢の傍に番をしていた笹村は問いかけた。「まアあまり軽い方じゃなさそうですね。」「医者を呼ぶようなことはないだろうか。」「さあ……産婆がああ言って引き受けているから、間違いはあるまいと思いますけれどね。」 そのうちに笹村は疲れて寝た。 魘されていたような心持で、明朝目のさめたのは、七時ごろであった。 茶の室へ出てみると、母親は台所でこちゃこちゃ働いていた。 お銀はまだ悩み続けていた。変形性膝関節症

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