一災起これば二災起こる
■雨のふる日でもトロトロと鳴いている
私はよく知らないが、金鵄勲章の鵄は鳶のたぐいであると云う。然らば、たとい鳶がいずこの果てへ追いやられても、あるいはその種族が絶滅に瀕しても、その雄姿は燦として永久に輝いているのである。鳶よ、憂うる勿れ、悲しむ勿れと云いたくもなる。昔と云っても、遠い江戸時代のことはわたしも知らない。ここでいう昔は、わたし自身が目撃した明治十年ごろから三十年頃にわたる昔のことである。そのつもりで読んで貰いたい。 その頃のむかしに比べると、最近の東京がいちじるしく膨脹し、いちじるしく繁昌して来たことは云うまでもない。その繁昌につれて、東京というものの色彩もまたいちじるしく華やかになった。家の作り方、ことに商店の看牌や店飾りのたぐいが、今と昔とはほとんど比較にならないほどに華やかになった。日暮里の炭酸ヘットスパがある美容院

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