一災起これば二災起こる
■ホテル・アムステルダム
顔が、別人のように青くふくれて、無機物の眼を大きく見開いて寝台のある反対側の壁へ、かっと、見えない凝視を投げつけていた。それは、恐しい形相だった。何ごとか名状出来ない恐怖とショックが原因で縊死したことを示していて、こんなことには慣れている筈のモウパア警部さえ思わず顔を外向けた程だった。が、自殺であることは疑いを容れない。しかも、死にたい衝動、或いは、死ななければならない理由が何んなに強かったか――その証拠に、テイラアはきちんと膝を折り、足首を腿へ縛りつけて、足が床へ着かないように注意して吊り下がっているのだ。鉤が割りに低いところにあり、綱が長いので、普通なら身長が届いて縊死の目的は達せられないのである。超常現象

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