一災起これば二災起こる
■秋の巴里は重く曇って
テイラアは、身につけている宝石のコレクションをよく取り出しては、魅了されたヴァン・デル・ヴェルドの眼の前に並べて見せたりしていた。この、ホテル・アムステルダムの主人も、以前は宝石商人で、殊にダイヤモンドには深い興味と経験を有っているのだった。
 前の晩、テイラアは早く寝に就いた。丁度その時三階には、その十四号室のテイラアのほかに客はなかった。静かな一夜が明けて、八日の朝である。「大陸の朝飯」といって、朝は珈琲と巻麺麭にきまっている。いつもの時間に給仕人のポウルが、それをテイラアの部屋へ持って行ったのだが、呼んでも叩いても応答がないので、前に言ったように帳場へ下りて女将セレスティンを呼んで来て、発見するに至ったのだ。看護 受験 家庭教師

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