■理想社会が父性原理
実顕地内のさまざまな物事に目がとまり、それがきっかけとなって神経回路をめぐるパルスはますます加速された。 自らも長時間働き続けながら、「楽だ楽だ」と言いながら働いている人たちが人間に見えなくなってきた。「彼らはロボットなのではないか」豊里の生活に根を下ろしたように順応して見えるヨーコも、タケシにはその一員に思えはじめた。 参画している人が、実顕地外の人にとる態度にも、タケシは引っかかった。実顕地のよさや楽しさを強調するだけで、よいのだろうか。素晴らしさを訴え、参画を呼びかけるのなら、もっともっと理想社会の現実化を急ぎ、誰にとっても楽しい社会を用意しておくべきだろう。だが、今の実顕地に理想社会と呼ばれる資格があるだろうか。少なくとも自分がここでの生活を面白いと思わなければ、ここは自分にとっての理想ではないはずである。それは、自分に問題があるのか。それとも、社会に問題があるのか。新潟 歯医者
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